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GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の併用は危険?それぞれの効果とは

GLP-1(ジーピーエルワン)受容体作動薬とDPP-4(ディーピーピーフォー)阻害薬は、どちらも血糖値をコントロールする働きがある薬です。

しかし、この2つの薬はどちらも「GLP-1受容体を介した血糖降下作用があり、両方を併用した場合の臨床試験成績はなく、有効性及び安全性が確認されていない」とされています。

本記事では、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の特徴や効果、副作用を詳しく解説します。GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬について詳しく知りたい方はぜひ、参考にしてください。

目次

GLP-1受容体作動薬の特徴

「GLP-1」は私たちの体内にもともとあるホルモンで、血糖値を一定の範囲におさめる働きがあるインスリンの分泌を促進します。GLP-1受容体作動薬はGLP-1をサポートする糖尿病の薬で、日本では2010年より販売が開始されました。

糖尿病にはインスリンをつくることができない1型と、インスリンは分泌されているものの量や働きが低下している2型の2種類がありますが、GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病にのみ使用します。

GLP-1受容体作動薬には、次の4つの特徴があります。

血糖値の上昇を抑制する薬

食事をすると小腸から「インクレチン」と呼ばれるホルモンが分泌されます。GLP-1はインクレチンの1つでインスリンの分泌を促進する働きがありますが、「DPP-4」と呼ばれる酵素にすぐに分解されてしまいます。

GLP-1受容体作動薬はDPP-4の働きを遅らせたり、すい臓のα細胞やβ細胞に働きかけて血糖値を下げたりする働きがある薬です。

すい臓のα細胞は、血糖値を上げる働きがあるホルモンである「グルカゴン」の分泌を促しますが、GLP-1受容体作動薬はα細胞に作用してグルカゴンの分泌を抑えます。

β細胞はインスリンの分泌をおこないますが、GLP-1受容体作動薬はβ細胞に働きかけて、インスリンの分泌を促進して血糖値を下げる働きがあります。

また、血糖値が上がる食後にのみ反応するため、低血糖を起こしにくく身体にかかる負担を軽減するのも特徴の1つです。

消化器系へ作用

食事により体内に取り込まれた糖質は小腸から吸収され、血糖値が上昇します。GLP-1受容体作動薬は胃のぜん動運動を抑制し、消化物が胃から小腸へと排出されるのを遅らせて食後の血糖値の上昇を抑制する作用があります。

中枢神経へ作用

脳の奥にある「視床下部(ししょうかぶ)」には、食欲を調整する働きがあります。GLP-1受容体作動薬は視床下部に直接作用して食欲を抑えるため、糖尿病の方に多い体重の増加を抑えることができます。

内服薬と注射がある

GLP-1受容体作動薬には内服薬と注射の2種類があり、内服薬は1日1回、注射は1日に1~2回、または週に1回投与します。

以前はGLP-1受容体作動薬は注射しかありませんでしたが、2021年に内服薬ができ、自身での注射が苦手な方もストレスなく使用できるようになりました。

ただし、内服薬は空腹時に飲む、約120mlの水と飲む、服用後30〜60分は飲食禁止などの注意事項があるため服用の際には注意が必要です。

GLP-1受容体作動薬の効果

GLP-1受容体作動薬は糖尿病の薬ですがダイエット効果が期待できるため、海外では肥満の治療薬としても使用されています。

ただし、日本糖尿病学会では「安全性や有用性の十分な臨床結果が確認されていないため、ダイエット目的での使用は認められない」との見解を示しており、ダイエット目的での使用は保険が適用されません。

そのため、ダイエット目的で使用する際は全額負担です。GLP-1受容体作動薬をダイエット目的で使用する際は、実績が豊富な医師の管理のもとでおこないましょう。

GLP-1受容体作動薬は次の4つの効果があるため、ダイエット効果に期待ができます。

過度な食事制限をせずダイエットが可能

ダイエットを失敗する原因の1つに、食事制限のつらさが挙げられます。GLP-1受容体作動薬は脳に直接作用して食欲を抑えたり、胃腸の動きを抑えて満腹感を持続したりする働きがあるため、自然に食欲が抑えられます。

また、脂肪分解を促進して身体に脂肪を溜め込みにくくする働きもあるため、過度な食事制限をしなくてもダイエットができます。

ただし、GLP-1受容体作動薬を使用すれば何もしなくてもダイエットが成功するわけではありません。高カロリーな食事は避けてバランスのよい食事を心がける、適度な運動をする、使用方法を守る、過度の飲酒は避けるなどが必要です。

リバウンドを防ぐ

ダイエット経験者の約6割がリバウンド経験者です。食事制限が続くと身体は命の危機があると判断し、吸収した栄養を脂肪として体内に溜め込むため、太りやすくなります。

GLP-1受容体作動薬でのダイエットは過度の食事制限が必要ないため、リバウンドを防ぐ働きがあります。

ダイエット時のストレスが少ない

ダイエットを成功させるためには食事制限や運動などが必要です。しかし、食事を我慢したり苦手な運動を続けたりすると多大なストレスをもたらし、イライラが募る、過食を引き起こす、うつになる、などの悪影響を与えることもあります。

GLP-1受容体作動薬を使ったダイエットなら、過度の食事制限や負荷がかかる運動の必要がないためストレスが感じにくくなり、ダイエットが成功しやすくなるでしょう。

負荷がかかる運動は不要

負荷がかかる運動は、はじめは頑張れても続けることが難しいものです。GLP-1受容体作動薬を使用すれば食欲そのものを抑えられるため、摂取するカロリーを楽に抑えることができます。

そのため、摂取したカロリーを消費するための過度の運動も必要ありません。ただし、まったく運動をしないと、運動をしている方と比べて体重が減少するスピードは落ちてしまいます。

適切な運動はダイエットの効率をよくしたりストレスを発散させたりする効果が期待できるため、無理のない範囲で適度な運動を取り入れましょう。

GLP-1受容体作動薬の副作用

GLP-1受容体作動薬は、使いはじめに嘔吐や吐き気、下痢、便秘など胃腸症状が起こる場合があります。数日から数週間の間にだんだんとおさまりますが、症状が改善されない場合や強い場合は医師に相談してください。

また、インスリンの分泌を促進する薬やインスリン製剤と併用する場合は、低血糖を起こす可能性があるため注意が必要です。

低血糖の症状が現れた場合には、ブドウ糖をすみやかに摂取してください。ブドウ糖や砂糖が入った食べ物や飲み物を常備しておくとよいでしょう。

DPP-4阻害薬の特徴

DPP-4阻害薬は、GLP-1などのインクレチンを分解する作用があるDPP-4の働きを阻止して血糖値を下げる薬です。DPP-4阻害薬には次の3つの特徴があります。

血糖値を下げる効果がある

DPP-4阻害薬がインクレクチンの分解を阻止すると、すい臓まで インクレクチンが届きます。結果、インスリンの分泌を促し、血糖値を上げる作用があるグルカゴンの働きを抑制することで血糖値を下げられます。

また、DPP-4阻害薬は血糖値の上昇に従い作用するため、低血糖を起こしにくいのも特徴の1つです。

2009年にDPP-4阻害薬が使用開始になるまで血糖値を下げる薬として用いられていたSU薬は、血糖値を下げる効果がずっと続くため、空腹時に低血糖を起こしやすいというデメリットがありました。

さらに、長期間使用するとインスリンを分泌する細胞が疲弊して効果が現れにくくなったり体重が増えやすくなったりする副作用もあったため、現在ではSU薬よりもDPP-4阻害薬が主に使用されています。

投与回数が少ない

糖尿病の薬は投与回数が多いことが多く、6割以上の方が1日に2回以上服用しています。DPP-4阻害薬は1日2回飲むものもありますが、1日1回、もしくは週1回の薬もあるため、投与回数の多さに伴う負担が少ないことも特徴の1つです。

また、食事の影響がなく、食前でも食後でもいつでも服用できるため、食事の時間が不定期な方やうっかり飲み忘れたなどの服薬に関するストレスも軽減します。

ただし、いつでも服用できると飲み忘れることが多くなるため、毎日決まった時間に服用するよう習慣づけることが大切です。

医療ダイエットに用いられる薬ではない

DPP-4阻害薬はGLP-1受容体作動薬と同じくインスリンの分泌をコントロールするため、体重が増えにくくなる薬です。しかし冒頭で解説したように、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の併用はできません。

医療ダイエットには GLP-1受容体作動薬が使われるため、DPP-4阻害薬は使用されません。

DPP-4阻害薬の副作用

DPP-4阻害薬は副作用が起きにくい薬ですが、まったく起きないわけではありません。

副作用には冷や汗がでる、力が抜けた感じがする、手足がふるえる、気持ちが悪くなる、などの低血糖の症状や、便秘、下痢、吐き気、胃の不快感などの消化器症状が報告されています。

まれにですが腸閉塞、急性膵炎、過敏症反応などの重篤な副作用が起こる場合もあります。高所で作業する仕事の方や自動車の運転をする方、心臓や腎臓が弱い方、高齢者の方は注意が必要です。

また、近年ではDPP-4阻害薬服用中に「水疱性類天疱瘡」の発症が増えていることが判明しています。水疱性類天疱瘡は強いかゆみを伴う赤い斑点(紅斑)や水ぶくれ(水疱)が全身の皮膚に多発する、高齢者に多くみられる免疫の病気です。

DPP-4阻害薬を服用して1年以上経てから発症する場合もあり、DPP-4阻害薬が原因と診断されにくい場合があります。服用中にかゆみや水ぶくれがでた場合は、早めに医師に相談してください。

まとめ

GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、血糖値をコントロールする働きがある薬ですが、併用はできません。

どちらの薬も特徴や効果、副作用をよく確認して正しく服用すれば、糖尿病をコントロールしたり体重を減らしたりして健康に暮らすことができる期間を延長する働きが期待できます。

医師の指導に従い正しく服用し、健康な方と変わらない生活の質や寿命を確保しましょう。

※本記事の情報は2023年5月時点のものです。
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