この記事のポイント
子どもの低身長で大切なのは、現在の身長だけでなく、成長曲線、年間の成長速度、出生時の状態、家族歴、思春期の進み方などを総合的に評価することです。
一般に、同性・同年齢の標準身長に対して−2SD以下は低身長の一つの目安ですが、−2SDより高くても、以前より身長の伸びが悪くなっている場合には注意が必要です。
低身長の多くは体質や遺伝的要因が関係しますが、中には成長ホルモン分泌不全症、甲状腺機能低下症、脳腫瘍、SGA性低身長症など、医学的な評価や治療が必要な原因が隠れていることがあります。
オーシャンキッズクリニックでは、大学病院の小児内分泌グループで診療する医師による低身長・成長の専門外来を行っています。
「クラスでいつも一番前です」
「去年から、あまり身長が伸びていない気がします」
「両親とも小柄なので、遺伝でしょうか?」
小学生・中学生のお子さんを持つ保護者の方から、このような相談をいただくことがあります。
実は、院長の私自身も、子どもの頃は背の順でいつも一番前でした。
「前へならえ!」で前の子のように腕を伸ばすことに、ちょっと憧れていたくらいです。
そして私自身、小学生の頃に身長のことで医療機関を受診しました。当時のかかりつけ医では詳しい検査ができなかったため、大学病院を受診し、ホルモンについての検査も受けました。
だからこそ、
「うちの子、このままで大丈夫かな?」
と心配する保護者の気持ちは、医師としてだけでなく、かつて低身長を心配した子どもの一人としてもよく分かります。
最近では「低身長外来」「成長外来」を設けるクリニックも増え、以前より相談しやすくなりました。
これはとてもよいことだと思います。
ただ、保護者の方に一つ知っていただきたいことがあります。
低身長診療は、「身長を測って、平均より低いかを見る」だけではありません。
子どもの成長やホルモンは「小児内分泌学」という専門領域です。
だからこそ当院では、院長自身が低身長を診るだけではなく、大学病院に協力をお願いし、大学病院の小児内分泌グループで診療する医師による専門外来を設けました。
今回は、
「なぜ子どもの低身長は、専門的に評価することが大切なのか?」
を、小学生・中学生のお父さん、お母さんにも分かりやすく解説します。
大切なのは「今、何cm?」だけではありません
低身長の診療というと、
「身長を測る」
「成長曲線を見る」
というイメージがあるかもしれません。
もちろん、どちらも大切です。
一般に、同性・同年齢の標準身長から**−2SD以下**であることは、低身長を考える一つの目安です。
しかし、ここで非常に大切なことがあります。
−2SDより高ければ、必ず「問題なし」というわけではありません。
例えば、同じ小学5年生で、現在の身長が同じ2人のお子さんがいたとします。
Aくんは、小さい頃から小柄ですが、毎年ほぼ一定のペースで身長が伸びています。
一方、Bくんは以前は平均的な身長だったのに、ここ2〜3年で身長の伸びが悪くなり、成長曲線上で徐々に平均との差が広がってきました。
現在の身長だけを見れば、2人は同じです。
しかし、
「成長」という視点から見ると、意味は同じではありません。
低身長診療で重要なのは、
身長という「点」だけではなく、成長という「線」を見ること。
日本小児内分泌学会の資料でも、成長ホルモン分泌不全性低身長症などの評価において、現在の身長だけでなく成長速度や成長曲線が重要になります。
これが子どもの成長を評価する第一歩です。
「遺伝でしょう」で終わらせてよいとは限りません
「お父さんも小さいので、この子も遺伝ですよね?」
これもよく聞かれる質問です。
確かに、身長には遺伝的な要素があります。
ご両親が小柄で、お子さんも小柄ということは珍しくありません。
しかし、
「親が小さい=子どもの低身長もすべて遺伝」
とは限りません。
低身長の背景には、
・成長ホルモン分泌不全性低身長症
・甲状腺機能低下症
・SGA性低身長症
・ターナー症候群
・ヌーナン症候群
・SHOX異常症
・骨や軟骨に関係する疾患
・慢性疾患
などが関係している場合があります。
また、まれではありますが、視床下部・下垂体周辺の器質的な疾患などが成長に影響することもあります。
もちろん、低身長のお子さん全員に病気があるわけではありません。
むしろ、病的な原因が認められないお子さんもたくさんいます。
だからこそ大切なのは、
「病気を探すこと」だけではなく、「病的な原因を疑うサインがないかを評価すること」
なのです。
なぜ「小児内分泌」の専門性が必要なのでしょう?
子どもの成長を評価するとき、現在の身長だけを見ているわけではありません。
例えば、
・これまでの成長曲線
・1年間に何cm伸びているか(成長速度)
・出生時の身長・体重
・在胎週数
・ご両親の身長
・これまでにかかった病気
・食事や栄養状態
・思春期が始まっているか
・思春期がどの程度進んでいるか
・身体診察で気になる所見がないか
など、さまざまな情報を組み合わせて考えます。
そのうえで必要と判断すれば、血液検査、ホルモンに関する検査、骨年齢の評価などを検討します。
しかし、ここで本当に大切なのは、
「検査ができること」だけではありません。
この子には、どの検査が必要なのか。
この検査結果を、どう解釈するのか。
今は経過観察でよいのか、それとも次の検査へ進むべきなのか。
この判断に、小児内分泌診療の専門性があります。
「成長ホルモンを測ればわかる」わけではありません
保護者の方から、
「血液検査で成長ホルモンを測れば、原因が分かりますか?」
と聞かれることがあります。
実際には、それほど単純ではありません。
成長ホルモンは一日の中で一定量が分泌され続けているわけではないため、通常の採血で一度測定するだけで、成長ホルモンの分泌状態を単純に判断できるものではありません。
成長曲線、成長速度、IGF-1などの検査値、身体所見などを総合的に評価し、必要な場合には成長ホルモン分泌刺激試験など、さらに詳しい検査を検討します。
また、病歴や診察・検査結果などから必要性があると判断された場合には、視床下部・下垂体などを評価するためMRI検査が検討されることもあります。
つまり、
「検査をすること」以上に、「誰にどの検査が必要なのかを判断し、その結果を正しく解釈すること」が重要です。
ここが、小児内分泌を専門に診療する医師の力が生きるところです。
小学生・中学生では「思春期」も重要です
低身長を考えるうえで、もう一つ非常に重要なのが思春期です。
特に小学校高学年から中学生では、思春期の進み方によって身長の伸び方が大きく変わります。
「まだ小学生だから大丈夫」
「中学生になったら一気に伸びるでしょう」
と考えたくなる気持ちはよく分かります。
実際、思春期の始まりが遅めで、その後に身長が伸びるお子さんもいます。
しかし、すべてのお子さんが同じ成長パターンをたどるわけではありません。
大切なのは、
「現在何cmか」だけではなく、「今、成長のどの段階にいるのか」
という視点です。
必要に応じて手のX線撮影などから骨年齢を評価し、暦の上の年齢だけでは分からない骨の成熟度を確認することもあります。
同じ年齢、同じ身長でも、思春期や骨成熟の進み方によって評価は変わります。
だからこそ、小学生・中学生の低身長では、
「身長 × 成長速度 × 思春期」
を一緒に考えることが重要です。
「もう少し様子を見ましょう」には、2種類あります
低身長外来を受診したからといって、必ず検査や治療を行うわけではありません。
専門的に評価した結果、
「今のところ大きな問題を疑う所見はないので、半年後にもう一度身長を確認しましょう」
となることもあります。
しかし私たちは、
「なんとなく様子を見ること」と、「評価したうえで様子を見ること」は違う
と考えています。
治療が必要なのか。
詳しい検査が必要なのか。
定期的に身長を測りながら経過を見ればよいのか。
それを整理することも、低身長外来の重要な役割です。
子どもの成長には「時間」があります
低身長診療でもう一つ忘れてはいけないのは、
子どもの成長には時間的な限りがある
ということです。
子どもは今この瞬間も成長しています。
原因となる疾患によっては、適切な時期に診断し、医学的な適応があれば治療を開始することが重要です。
一方で、
「早く受診すれば必ず背が高くなる」という意味ではありません。
また、身長が低いからといって、すべてのお子さんが成長ホルモン治療の対象になるわけでもありません。
成長ホルモン治療には、対象となる疾患や医学的な適応があります。
日本小児内分泌学会でも、SGA性低身長症、SHOX異常症、ヌーナン症候群など、成長障害の原因に応じた診療・治療に関する指針が示されています。
だからこそ私たちは、
「身長を高くするために何でも治療する」
のではなく、
「評価できる時期に、きちんと評価しておく」
ことが大切だと考えています。
低身長外来は、「あるか」だけでなく「誰が診るか」
最近では、さまざまな医療機関で低身長について相談できるようになりました。
そこで保護者の方に、低身長外来を選ぶ際に確認していただきたいことがあります。
それは、
「低身長外来があるか」だけでなく、「誰が、どのような専門性をもって診療しているのか」
ということです。
低身長は、成長ホルモンだけの問題ではありません。
成長、甲状腺、思春期、性腺、副腎など、小児内分泌学の知識を組み合わせながら評価する領域です。
そして、正常な成長にも大きな個人差があります。
だからこそ、
「その子らしい成長」と「詳しく調べるべき成長」を見分ける専門的な視点
が重要になります。
当院が「大学病院の小児内分泌グループの医師」による診療にこだわる理由
オーシャンキッズクリニックでは、低身長・成長の診療を、大学病院の小児内分泌グループで診療する医師が担当しています。
初診では30分の診療枠を設け、これまでの成長経過などを確認しながら診察します。
なぜ、そこまで専門性にこだわるのでしょうか。
大学病院の小児科では、「小児科」という一つの診療科の中でも、さらに専門領域が分かれています。
例えば、院長が非常勤講師を務める藤田医科大学病院の小児領域でも、
・アレルギー・免疫
・循環器
・腎臓
・先天代謝
・内分泌
・感染症
・血液・腫瘍
・神経
・新生児(NICU)
・小児外科(体表、呼吸器、消化器)
など、幅広いサブスペシャリティの医師が、それぞれの専門性を生かして診療しています。
実際に藤田医科大学病院では、低身長、思春期早発症、糖尿病などが内分泌代謝領域の対象疾患として診療されています。
小児科医は「子どもの総合医」です。
しかし、子どもの医療が高度化した現在、すべての病気を一人の小児科医だけで同じ深さまで専門的に診るわけではありません。
低身長・成長は、小児内分泌の専門性が生きる領域です。
だから私は、自分一人ですべてを診ようとするのではなく、大学病院に協力をお願いし、小児内分泌を専門に診療する医師に当院の低身長外来を担当してもらう体制をつくりました。
私たちが目指しているのは、
「身長を測って終わる」のではなく、その子の「成長の背景」まで考える低身長外来です。
成長曲線、成長速度、出生歴、家族歴、思春期などを確認し、
「この成長は、その子らしい成長なのか」
「詳しい評価が必要なサインがないか」
を専門的な視点から考えます。
必要があれば検査を行い、さらに高度な検査や治療が必要と判断した場合には、適切な高次医療機関へつなぎます。
一方で、専門的に評価した結果、
「現在は心配せず成長を見守ってよい」
と判断できれば、その理由をご家族にきちんと説明する。
それも大切な専門医療だと考えています。
「身長を伸ばす外来」ではなく、「子どもの成長を診る外来」へ
私たちが低身長外来で診たいのは、
身長という数字だけではありません。
その子が、これまでどのように成長してきたのか。
今、成長のどの段階にいるのか。
成長の経過に、医学的に気になるサインがないのか。
そこまで含めて考えます。
だからオーシャンキッズクリニックでは、
「身長を伸ばす外来」ではなく、「子どもの成長を専門的に診る外来」
でありたいと考えています。
「クラスで一番小さいけれど大丈夫かな?」
「最近、身長が伸びていない気がする」
「遺伝と言われたけれど、本当にそれだけなのかな?」
そんな小さな疑問からでも構いません。
子どもの成長が気になったときが、成長曲線を一度見直してみるタイミングです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子どもの低身長は何科に相談すればいいですか?
まず小児科で相談できます。特に、身長が−2SD以下、成長速度が低下している、思春期の進み方が気になるなどの場合には、小児内分泌を専門に診療する医師による評価が重要になることがあります。
当院では、大学病院の小児内分泌グループで診療する医師による低身長・成長の専門外来を行っています。
Q2. 何cm以下なら低身長ですか?
年齢と性別によって標準身長が異なるため、「
cm以下」と一律には決められません。
一般に、同性・同年齢の標準身長から−2SD以下が低身長の一つの目安です。
ただし、−2SDより高くても、それまでの成長曲線から外れてきたり、年間の成長速度が低下していたりする場合には評価が必要になることがあります。
Q3. 両親が小柄なら、子どもも遺伝なので受診しなくていいですか?
身長には遺伝的要因がありますが、「両親が小柄だから」という理由だけで医学的な原因を否定することはできません。
成長曲線、成長速度、出生歴、ご両親の身長、思春期などを総合して評価します。
Q4. 低身長外来ではどんな検査をしますか?
すべてのお子さんに同じ検査を行うわけではありません。
成長経過や診察所見などから必要性を判断し、血液検査、ホルモンに関する検査、骨年齢の評価などを検討します。さらに詳しい評価が必要な場合には、専門的な検査につなげることがあります。
Q5. 成長ホルモンは普通の血液検査で分かりますか?
一度の通常採血だけで成長ホルモンの分泌状態を単純に判断することはできません。
成長曲線、成長速度、IGF-1などを含めて評価し、必要な場合には成長ホルモン分泌刺激試験などを検討します。
Q6. 低身長なら成長ホルモン治療を受けられますか?
いいえ。身長が低いすべてのお子さんが成長ホルモン治療の対象になるわけではありません。
対象となる疾患や医学的な適応があり、専門的な評価が必要です。
Q7. 小学生のうちに低身長外来を受診した方がいいですか?
「何歳になったら受診」という一律の基準ではありません。
身長がかなり低い、以前より伸びが悪くなった、成長曲線が気になるなどの場合には、「もう少し待とう」と自己判断する前に一度相談することをおすすめします。
Q8. 中学生になってからでも相談できますか?
相談できます。
ただし、小学校高学年から中学生では思春期や骨成熟が進むため、現在の身長だけでなく成長速度や思春期の進行を含めて評価することが重要です。気になった時点でご相談ください。
知多市・知多半島で子どもの低身長・成長について相談したい方へ
オーシャンキッズクリニックでは、大学病院の小児内分泌グループで診療する医師による低身長・成長の専門外来を行っています。
知多市をはじめ、東海市、常滑市、阿久比町、東浦町、半田市など知多半島周辺で、
「子どもの身長が低い」
「小学生になっても身長が伸びない」
「中学生だけれど身長が気になる」
「成長曲線が下がってきた」
「低身長を専門的に診てもらいたい」
「成長ホルモンについて相談したい」
というご家族はご相談ください。
当院では、現在の身長だけで判断するのではなく、成長曲線・成長速度・出生歴・家族歴・思春期などを踏まえて、子どもの「成長」そのものを評価することを大切にしています。
参考資料
・日本小児内分泌学会「学会ガイドライン・成長障害」
・日本小児内分泌学会「成長ホルモン分泌不全性低身長症」関連資料
・日本小児内分泌学会「SGA性低身長症におけるGH治療の手引き」
・日本小児内分泌学会「SHOX異常症の診断・治療指針」
・藤田医科大学病院 小児科「診療内容・専門外来」
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。個々のお子さんの診断や治療については、実際の診察結果に基づいて判断する必要があります。





























