生まれてくる赤ちゃんを守る新しい予防接種。効果・安全性・接種時期を解説
「妊娠中にRSウイルスのワクチンを接種した方がいいの?」
「アブリスボって、どんなワクチン?」
「赤ちゃんを守る効果はどのくらいあるの?」
2026年4月から、妊婦さんを対象としたRSウイルス母子免疫ワクチン「アブリスボ」の定期接種が始まりました。
これは、赤ちゃんが生まれる前から、重症感染症への備えができる予防接種です。
今回は、アブリスボの仕組み、効果、副反応、接種時期、知多市での接種方法について、科学的根拠に基づいて解説します。
1.アブリスボとは?赤ちゃんではなく妊婦さんに接種するワクチン
アブリスボは、ファイザー社が開発したRSウイルスワクチンです。
妊婦さんが接種することで、お母さんの体内にRSウイルスに対する抗体が作られ、その抗体が胎盤を通じて赤ちゃんへ移行します。
生まれたばかりの赤ちゃんは、免疫機能がまだ十分に発達していません。
その時期を、お母さんから受け取った抗体で守る仕組みを「母子免疫」と呼びます。
アブリスボは、赤ちゃんに直接注射するワクチンではありません。
妊娠中に接種することで、出生後の赤ちゃんのRSウイルスによる下気道感染症を予防することを目的としています。
2.RSウイルスは、なぜ赤ちゃんにとって危険なの?
RSウイルスは、鼻水、咳、発熱などを引き起こす呼吸器感染症の原因ウイルスです。
2歳までにほぼすべての子どもが一度は感染するとされています。
多くの場合は風邪のような症状ですが、生後間もない赤ちゃんでは、細気管支炎や肺炎を起こすことがあります。
特に注意したいのは、呼吸が苦しくなることです。
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呼吸が速い
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胸やみぞおちが呼吸のたびにへこむ
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母乳やミルクを十分に飲めない
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呼吸が止まるような様子がある
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顔色や反応が悪い
こうした症状がある場合は、速やかな医療機関での評価が必要です。強い呼吸困難や無呼吸、意識障害がある場合は119番をためらわないでください。
また、早産児や基礎疾患のある赤ちゃんだけでなく、正期産で健康に生まれた赤ちゃんでも重症化する可能性があります。実際に、当院でも年に数件は入院が必要と判断し、病院へ緊急入院をお願いしています。
そのため、出生前からの予防が重要なのです。
3.アブリスボの効果は?重症化を約8割予防するって本当?
アブリスボの有効性は、国際共同第Ⅲ相臨床試験「MATISSE試験」で検証されました。
この研究では、約7,400人の妊婦さんが参加し、出生後の赤ちゃんのRSウイルス感染症について調べられました。
その結果、医療機関への受診を必要とする重症RSウイルス下気道感染症について、次の予防効果が示されました。
| 評価期間 | 重症下気道感染症に対する予防効果 |
|---|---|
| 生後90日以内 | 約82% |
| 生後180日以内 | 約70% |
ここで重要なのは、数字の意味です。
「約82%の赤ちゃんが感染しなくなる」という意味ではありません。
ワクチンを接種した妊婦さんから生まれた赤ちゃんでは、接種していない比較群と比べて、重症下気道感染症の発生リスクが相対的に約82%低かったという意味です。
また、医療機関への受診を必要とするRSウイルス下気道感染症全体に対する予防効果は、重症例に対する効果より小さくなります。
つまり、アブリスボは感染を完全に防ぐワクチンではなく、特に生後早期のRSウイルス感染症の重症化を減らすことが期待されるワクチンです。
4.アブリスボは妊娠何週から接種できる?
2026年4月からの定期接種では、次のように定められています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 妊娠28週0日〜36週6日 |
| 接種回数 | 妊娠ごとに1回 |
| 接種方法 | 筋肉内注射 |
| 使用ワクチン | アブリスボ |
| 接種費用 | 定期接種の対象者は原則無料 |
なぜ、接種する時期が決まっているのでしょうか。
ワクチン接種後、お母さんの体内で抗体が作られ、その抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行するまでには時間が必要だからです。
接種から14日以内に生まれた赤ちゃんでは、十分な予防効果が得られるか確立していません。
早産の可能性がある方や、出産時期について心配がある方は、産科の主治医と相談してください。
5.妊娠中の接種は安全?副反応は?
妊娠中に接種するワクチンだからこそ、安全性を十分に理解することが大切です。
主な副反応として、次の症状が報告されています。
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接種部位の痛み
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頭痛
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筋肉痛
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接種部位の腫れや赤み
多くは一時的な症状です。
一方で、妊娠中の接種に関する安全性については、継続的な評価が行われています。
海外の研究では、妊娠高血圧症候群などの妊娠経過への影響について検討が続けられています。
現時点で、すべてのリスクが完全に解明されたわけではありません。
そのため、妊娠経過に心配がある場合や、過去にワクチンで重いアレルギー反応を起こしたことがある場合は、接種前に医師へ相談してください。
効果と安全性の両方を理解したうえで、納得して接種を選択することが大切です。
6.知多市ではアブリスボを無料で接種できる?
はい。
知多市では2026年4月1日から、アブリスボの定期接種が始まりました。
接種日時点で妊娠28週0日〜36週6日の知多市民は、対象条件を満たせば無料で接種できます。
接種には、知多市が発行する予診票と母子健康手帳が必要です。
また、里帰り出産などで知多市外の医療機関で接種する場合は、事前申請が必要です。
知多市によると、書類の作成には10日前後かかるため、早めの手続きが推奨されています。
接種できる医療機関や申請方法は、知多市の公式ホームページをご確認ください。
7.アブリスボを接種すれば、出生後の感染対策は不要?
いいえ。
アブリスボを接種していても、RSウイルスに感染する可能性はあります。
また、RSウイルス以外の呼吸器感染症を防ぐものでもありません。
出生後は引き続き、手洗い、体調不良の家族との接触をできるだけ避けること、室内の換気などが大切です。
特に生後数か月の赤ちゃんでは、発熱の有無だけでなく、呼吸状態や哺乳量を確認してください。
ワクチンによる予防と、出生後の感染対策は、どちらも大切です。
8.妊娠中にアブリスボを接種できなかった場合は?
接種できなかったからといって、赤ちゃんを守る方法が何もないわけではありません。
近年、RSウイルスに対する予防法は進歩しています。
妊婦さんに接種するアブリスボとは別に、出生後の赤ちゃんにRSウイルスに対する抗体を直接投与する方法もあります。
その一つが「エヌフロンシア」です。
ただし、アブリスボとは仕組みも対象も異なり、使用できる条件や費用の取り扱いについても確認が必要です。
エヌフロンシアについては、次回の医療コラムで詳しく解説します。
オーシャンキッズクリニックから、これから赤ちゃんを迎える皆さんへ
RSウイルスは、多くの子どもが経験する身近な感染症です。
しかし、生後間もない赤ちゃんにとっては、入院が必要になることもある重要な感染症です。昼間は問題なくても、夜間悪化して救急車を呼ぶことになった事例も多く経験します。
これまでは、赤ちゃんが生まれてから感染予防を考えることが中心でした。
アブリスボの登場によって、赤ちゃんが生まれる前から、重症感染症への備えを始めるという選択肢が広がりました。
一方で、ワクチンの効果や副反応を正しく理解することも大切です。
オーシャンキッズクリニックでは、医学的な根拠に基づき、保護者の皆さんが納得して判断できる情報をお届けしたいと考えています。
妊娠中の接種については産科の主治医と相談し、出生後の赤ちゃんの体調や感染症について心配なことがあれば、小児科へご相談ください。
赤ちゃんの未来を守るために、妊娠中からできることがある。
こども、未来、つなぐ。
医療法人OKC オーシャンキッズクリニック






























