HPVワクチンについて、あらためて考えてみませんか?
夏休みは、HPVワクチンの接種を考えるよいタイミングです。
学校がある時期は、部活、習い事、定期テスト、学校行事などで、なかなか予防接種の予定を立てにくいご家庭も多いと思います。
一方、夏休みは比較的スケジュールを調整しやすく、接種を始めるきっかけにしやすい時期です。
最近、当院でもHPVワクチンを接種される方が少しずつ増えています。
保護者の方からも、
「そろそろ受けた方がいいと思っていました」
「学校から案内が来たので相談したいです」
「副反応が心配で迷っていました」
という声をよくお聞きします。
HPVワクチンは、子宮頸がんを予防するための大切なワクチンです。
今回は、最近報告された英国の研究もふまえながら、HPVワクチンの意味と、夏休みに接種を考えていただきたい理由をお伝えします。
「子宮頸がん死亡ゼロ」が示したHPVワクチンの力
2026年に報告された英国イングランドの研究では、HPVワクチン導入後の子宮頸がん死亡率の変化が解析されました。
この研究では、2001年から2024年までの人口ベースの死亡データを用いて、HPVワクチン導入後に若い女性の子宮頸がん死亡がどう変化したかを検討しています。
特に注目されるのは、12〜13歳でHPVワクチンの接種対象となった世代を多く含む20〜24歳女性です。
この年代では、2020〜2024年の5年間で子宮頸がん死亡が0例でした。過去のデータから予測される死亡数は23.1例であり、死亡率は100%低下していました。研究では、2024年末までにHPVワクチンにより約199.6人の子宮頸がん死亡が回避されたと推定されています。
もちろん、この研究は「個人ごとの接種歴」と「死亡」を直接結びつけたものではなく、人口全体のデータを解析した観察研究です。
そのため、「ワクチンだけで完全に死亡ゼロになった」と単純に断定するものではありません。
それでも、接種率が高い世代ほど子宮頸がん死亡が大きく減っていること、特に12〜13歳で接種対象となった世代で強い効果が示されていることは、HPVワクチンの公衆衛生上の意義を考えるうえで非常に重要です。
日本の全国症例対照研究では、HPVワクチンを接種した女性は、接種していない女性と比べて、子宮頸がんの前がん病変であるCIN2以上のリスクが約75%低く、CIN3以上では約81%低いと推定されています。
HPVワクチンは何を予防するワクチン?
HPVは、ヒトパピローマウイルスのことです。
HPVの中には、子宮頸がんの原因になりやすい型があります。
厚生労働省も、HPVワクチンは子宮頸がんを起こしやすい一部のHPV感染を防ぐことができるワクチンと説明しています。
子宮頸がんは、若い世代にも関係するがんです。
日本では子宮頸がんの患者さんが年間約11,000人報告されており、予防と早期発見が大切です。
HPVワクチンは、「今すぐ困っている病気を治す薬」ではありません。
将来の子宮頸がんのリスクを下げるために、今できる予防です。
対象は小学校6年生から高校1年生相当の女子です
日本では、HPVワクチンは小学校6年生から高校1年生相当の女子が定期接種の対象です。対象年齢であれば、公費で接種できます。
特に、まだ接種を始めていない中学生・高校1年生相当のお子さんは、夏休みのうちに接種スケジュールを確認しておくことをおすすめします。
HPVワクチンは、種類や年齢によって接種回数や間隔が異なります。
「いつ始めればよいか」「何回必要か」「高校1年生だけれど間に合うか」など、不安がある場合は、母子手帳を持ってご相談ください。
「副反応が心配」で迷っているご家庭へ
HPVワクチンについては、過去に積極的勧奨が差し控えられていた時期がありました。
そのため、今でも不安を感じている保護者の方は少なくありません。
厚生労働省によると、HPVワクチンは2013年6月から積極的勧奨が一時的に差し控えられていましたが、専門家の評価を経て、2022年4月から他の定期接種と同様に個別の勧奨が再開されています。
予防接種である以上、接種部位の痛み、腫れ、発熱、気分不快、失神などが起こることがあります。
特に注射への緊張で気分が悪くなることもあるため、接種後は院内でしばらく様子を見ます。
不安がある場合は、無理にその場で決める必要はありません。
大切なのは、正しい情報をもとに、ご家庭で納得して判断することです。
夏休みにHPVワクチンをおすすめする理由
夏休みにHPVワクチンをおすすめする理由は、いくつかあります。
まず、学校の授業や定期テストへの影響が少ないことです。
接種後に腕の痛みやだるさが出ることがあっても、学校がある日より予定を調整しやすくなります。
次に、接種スケジュールを始めやすいことです。
HPVワクチンは、接種回数や間隔を考えて進める必要があります。夏休みに1回目を接種しておくと、その後のスケジュールも立てやすくなります。
また、親子で相談する時間を取りやすいことも大きな理由です。
HPVワクチンは、保護者だけでなく、本人にもわかりやすく説明し、納得したうえで受けることが大切です。
接種しても子宮頸がん検診は必要です
HPVワクチンはとても重要な予防手段ですが、すべての子宮頸がんを完全に防ぐものではありません。
厚生労働省も、HPVワクチンですべての高リスク型HPV感染を予防できるわけではないため、接種後も子宮頸がん検診を定期的に受けることが大切と説明しています。
つまり、子宮頸がん予防は、
HPVワクチンで感染を予防する
将来、対象年齢になったら子宮頸がん検診を受ける
この2つを組み合わせることが大切です。
当院でもHPVワクチン接種の相談が増えています
最近、当院でもHPVワクチンを接種される方が増えています。
「友人が接種したと聞いた」
「学校や自治体から案内が届いた」
「ニュースや記事を見て、あらためて必要性を感じた」
「夏休みのうちに始めたい」
このようなきっかけで相談されるご家庭が増えている印象です。
HPVワクチンは、将来のための予防接種です。
子どもが大きくなったとき、「あの時、受けておいてよかった」と思える選択肢の一つになるかもしれません。
まとめ
子宮頸がんは、日本でも年間約1.1万人が診断され、約3,000人が亡くなる病気です。だからこそ、小学校6年生から高校1年生相当の定期接種の時期に、将来のための予防としてHPVワクチンを考えることが大切です。
英国イングランドの研究では、12〜13歳で接種対象となった世代を多く含む20〜24歳女性で、2020〜2024年の子宮頸がん死亡が0例だったことが報告されました。これは、HPVワクチンが将来の命を守る可能性を示す、とても重要な結果です。
日本では、小学校6年生から高校1年生相当の女子が定期接種の対象です。
夏休みは、HPVワクチンについて親子で話し合い、接種を始めるよい機会です。
接種を迷っている方、スケジュールがわからない方、副反応が心配な方は、母子手帳をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。





























