謎のかぜ?ヒトメタニューモウイルスについて
「かぜと言われたけれど、咳が長い」
「熱が下がってもゼーゼーする」
そんなときに原因のひとつとして考えられるのが、ヒトメタニューモウイルス感染症です。
ヒトメタニューモウイルスとは?
ヒトメタニューモウイルス、略して hMPV は、乳幼児から大人まで感染する呼吸器ウイルスです。症状は一般的なかぜに似ており、咳、発熱、鼻水・鼻づまり、息苦しさなどがみられます。多くの健康なお子さんでは軽症で自然に改善しますが、乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方では重症化することがあります。
日本では、晩冬から春にかけて流行しやすいとされ、RSウイルスと同じように、乳幼児の急性細気管支炎や肺炎の原因になることがあります。最近、当院から肺炎で入院したお子様の多くがこの感染症です。
潜伏期間はおよそ3〜5日、感染経路は主に飛沫感染・接触感染です。
どんな症状が出る?
よくみられる症状は以下です。
- 発熱
- 咳
- 鼻水、鼻づまり
- ゼーゼー、ヒューヒューする呼吸
- 食欲低下
- 機嫌が悪い
- 乳児では哺乳量の低下
特に、咳が強く、長引きやすいことがあります。熱が下がったあとも咳が残ることがあります。
「普通のかぜ」と何が違う?
症状だけで、普通のかぜ・RSウイルス・インフルエンザ・新型コロナなどと完全に区別することは難しいです。
ヒトメタニューモウイルスは、いわゆる「かぜ」の原因ウイルスのひとつですが、乳幼児では気管支の奥まで炎症が広がり、ゼーゼーする咳や呼吸が苦しそうな状態になることがあります。
検査はできるの?
ヒトメタニューモウイルスは、鼻の奥を綿棒でぬぐう迅速抗原検査で調べることができます。検査時間は比較的短く、外来で結果がわかることが多い検査です。ただし、迅速検査の保険適用は、6歳未満で、なおかつ、聴診や画像検査などから肺炎が疑われる場合などに限られます。
ただし、すべてのお子さんに検査が必要なわけではありません。
ヒトメタニューモウイルスは、陽性とわかっても特効薬があるわけではなく、治療は基本的に対症療法です。そのため、症状が軽く、呼吸状態が安定している場合は、検査をせずに経過をみることがほとんどです。
つまり、検査は「原因を知るため」だけでなく、肺炎や細気管支炎など重症化が心配なときに、診断や経過判断の参考として行う検査と考えるとよいでしょう。実際の臨床では、肺炎の疑う場合は、そもそも重症度が高く入院適応になりやすく、入院先の病院で検査を行い、肺炎の原因がヒトメタニューモウイルスと判明する場合が多いです。クリニックでは、ヒトメタニューモウイルスの診断が重要なのではなく、肺炎をおこしたり、入院が必要かどうかの判断をすることの方が重要です。
治療は?
ヒトメタニューモウイルスに対する特効薬は、一般的にはありません。治療の基本は、症状に応じた対症療法です。
ご家庭では、
- 水分をこまめにとる
- 鼻水を吸って呼吸を楽にする
- しっかり休む
- 必要に応じて解熱薬を使う
- 呼吸状態が悪い場合は医療機関で評価する
ことが大切です。
抗菌薬、いわゆる抗生物質は、ウイルスそのものには効果がありません。ただし、細菌感染の合併が疑われる場合には、医師の判断で使用することがあります。
受診の目安
次のような場合は、小児科を受診してください。
- 3日以上高熱が続く
- 咳が強く眠れない
- ゼーゼー、ヒューヒューする
- 呼吸が速い、肩で息をしている
- 顔色が悪い
- 水分がとれない
- おしっこが少ない
- ぐったりしている
- 生後6か月未満の赤ちゃんで発熱や咳がある
特に、息が苦しそう・哺乳できない・ぐったりしている場合は、早めの受診が必要です。
登園・登校はいつから?
ヒトメタニューモウイルス感染症は、インフルエンザのように明確な出席停止期間が決まっている感染症ではありません。
登園・登校の目安は、
熱が下がっていること、食事や水分がとれていること、咳や呼吸状態が落ち着いて集団生活ができること
です。
咳が残っていても、全身状態がよければ登園・登校できることもあります。ただし、園や学校のルールも確認しましょう。
家庭でできる予防
ヒトメタニューモウイルスは、咳やくしゃみによる飛沫、手や物を介した接触で広がります。
家庭では、
- こまめな手洗い
- 咳エチケット
- タオルや食器の共有を避ける
- 鼻水を拭いたティッシュはすぐ捨てる
- ドアノブやおもちゃを拭く
- きょうだい間での濃厚接触をできる範囲で減らす
といった対策が有効です。
まとめ
ヒトメタニューモウイルスは、決して珍しいウイルスではなく、子どもの「かぜ」の原因のひとつです。
多くは自然に改善しますが、乳幼児では咳が強くなったり、ゼーゼーしたり、肺炎や細気管支炎につながることがあります。
検査はできますが、すべてのお子さんに必要なわけではありません。大切なのは、検査結果だけでなく、呼吸の状態、水分がとれているか、ぐったりしていないかをしっかり見ることです。
「ただのかぜかな?」と思っても、呼吸が苦しそう、水分がとれない、ぐったりしているときは、早めに小児科へご相談ください。





























