近年は、インフルエンザの流行のパターンの多様性や、季節性の薄れ、流行の長期化などがみられるようになってきました。このような変化に対応するためには、本来は冬期のみを対象とした予防から、通年性の予防が必要になってきているのかもしれません。
しかし、
「インフルエンザワクチンは受けたいけれど、注射が苦手」
「毎年、子どもが泣いてしまって大変」
「兄弟の2回接種を予定するのが負担」
「夏にもインフルエンザが出るなら、長く守れる方法を考えたい」
このようなご家庭に、当院では経鼻インフルエンザワクチン「フルミスト®」という選択肢をご案内しています。2年前から開始し、既に1000名近いお子様に受けていただき、大きな副作用がないことを確認しております。
フルミスト®は、鼻にスプレーするタイプのインフルエンザワクチンです。注射ではありません。針を使わず、左右の鼻にワクチンを噴霧して接種します。
子どもにとって「痛くない」「1回で済む」というメリットはとても大きく、毎年のインフルエンザ予防接種のハードルを下げてくれるワクチンです。
インフルエンザは冬だけの病気ではなくなっています
インフルエンザは冬に流行しやすい感染症ですが、最近は春や夏にも患者さんがみられることがあります。
2026年8月現在でも、関東の一部地域ではインフルエンザの流行開始の目安を超えています。神奈川県では2026年第33週、8月10日から16日の定点当たり患者報告数が1.37となり、流行開始の目安である1.00を超えました。千葉県でも2026年第34週、8月17日から23日に定点当たり報告数が1.80となり、流行開始の目安を上回っています。
夏休みは、旅行、帰省、部活、合宿、学童、塾、習い事などで人の移動や集団活動が増えます。冷房で室内を閉め切る時間も長くなり、換気が不十分になることもあります。
つまり、インフルエンザは「冬だけ気をつければよい病気」ではなく、通年で注意が必要な感染症になりつつあると考える必要があります。
フルミスト®と注射ワクチンの違い
インフルエンザワクチンには、大きく分けて2種類あります。
1つは、従来から使われている注射のインフルエンザHAワクチンです。これは不活化ワクチンで、皮下注射で接種します。
もう1つが、経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト®」です。フルミスト®は、弱毒化したインフルエンザウイルスを鼻の中に噴霧する生ワクチンです。日本では、2歳以上19歳未満を対象に、0.2mLを1回、左右の鼻に分けて噴霧するワクチンとして承認されています。
インフルエンザウイルスは、主に鼻やのどなどの気道粘膜から体に入ります。フルミスト®は、その入り口である鼻の粘膜に直接投与することで、粘膜免疫を含めた免疫反応を誘導することが期待されています。添付文書でも、抗原特異的な血清中抗体、粘膜抗体応答、T細胞応答を誘導し、インフルエンザ予防に寄与すると考えられるとされています。
当院がフルミスト®をすすめる理由1:痛くない
最大のメリットは、痛くないことです。
注射が苦手なお子さんは少なくありません。
予防接種のたびに泣いてしまう、診察室に入るだけで怖がる、兄弟で接種すると保護者の負担が大きい、というご家庭も多いと思います。
日本小児科学会も、子どもにとってワクチンに伴う痛みは重大な懸念事項であり、経鼻接種による痛みの軽減には重要な意義があるとしています。
フルミスト®は鼻にスプレーするだけなので、針を刺す痛みがありません。
「痛くないなら受けられる」というお子さんにとって、これは非常に大きなメリットです。
ただし、点鼻には少しコツがいりますので、慣れた施設で行うことをおすすめします。
当院がフルミスト®をすすめる理由2:1回接種で済む
フルミスト®は、対象年齢では1シーズン1回接種です。左右の鼻に1回ずつ噴霧して終了します。
13歳未満の注射ワクチンでは、一般的に2回接種が必要になることが多く、2回分の予約、体調管理、通院、本人の不安への対応が必要です。
一方、フルミスト®は1回で済むため、
通院回数を減らせる
兄弟で予定を組みやすい
部活や習い事と調整しやすい
2回目を忘れる心配がない
子どもの心理的負担が少ない
というメリットがあります。
忙しい子育て世代にとって、1回で済むインフルエンザ予防は大きな魅力です。
当院がフルミスト®をすすめる理由3:鼻の入り口で守る発想
インフルエンザは、主に鼻やのどから感染します。
フルミスト®は、鼻に噴霧することで、ウイルスの侵入口である気道粘膜での免疫反応を期待するワクチンです。
注射ワクチンは血液中の抗体を中心に免疫を誘導します。
一方、フルミスト®は、血液中の抗体だけでなく、鼻やのどの粘膜での免疫、さらに細胞性免疫も含めた、自然感染に近い形の免疫誘導が期待されています。第一三共の製品情報でも、自然感染後に誘導される免疫と類似した局所抗体応答、全身の液性免疫・細胞性免疫の誘導が期待されると説明されています。
「ウイルスが入ってくる場所で守る」という考え方は、経鼻ワクチンならではの特徴です。
当院がフルミスト®をすすめる理由4:インフルエンザBへの効果が高い
ここは、正確にお伝えする必要があります。
日本小児科学会は、現時点では、注射ワクチンと経鼻ワクチンの間に、インフルエンザ罹患予防効果に対する明確な優位性は確認されていないとしています。そのうえで、2歳〜19歳未満では、注射ワクチンと経鼻ワクチンのどちらも同等に推奨しています。
つまり、医学的に正確に言うと、フルミスト®は「注射より必ず効く」と断定するワクチンではありません。
ただし、海外のリアルワールドデータでは、注射ワクチンと経鼻ワクチンの効果が同程度にみられた報告や、B型インフルエンザでは経鼻ワクチンが良好な結果を示した解析もあります。2025年のシステマティックレビュー・ネットワークメタ解析では、全体としてLAIVとIIVの有効性はおおむね比較可能で、2017/18〜2022/23シーズンのB型ではLAIVの相対的な有効性が高いという結果が報告されています。
一方で、過去にはA/H1N1に対して経鼻ワクチンの有効性が低かったシーズンも報告されており、ウイルス株との相性によって効果は変わります。FDAも、2015/16シーズンの米国データでは、A/H1N1に対してフルミストの有効性が注射ワクチンより低かったと説明しています。
そのため、当院では「効果が必ず注射より上」とは説明していません。
しかし、効果は注射と同等に期待できる選択肢であり、痛くない・1回で済む・鼻の粘膜免疫を期待できるという実用面のメリットが大きいワクチンとしておすすめしています。
当院がフルミスト®をすすめる理由5:効果の持続期間が長い
従来の注射ワクチンも、インフルエンザ予防に大切なワクチンです。
ただし、一般的にインフルエンザHAワクチンの予防効果が期待できる期間は、接種後2週間から5か月程度とされています。
多くの方は、秋から冬に注射ワクチンを接種します。
その場合、翌年の夏休みまで十分な効果が続くとは考えにくく、夏の小流行には免疫のすき間ができる可能性があります。
フルミスト®については、約1年間効果が持続すると説明されることがあります。ただし、ワクチン株は毎年見直されるため、毎年の接種が基本です。
そのうえで、春や夏にもインフルエンザがみられる現在の状況では、より長い期間の予防を期待しやすい選択肢として、フルミスト®は検討する価値があります。
フルミスト®は誰におすすめ?
特に、次のようなお子さんにはフルミスト®をおすすめしやすいです。
注射が苦手
毎年の予防接種で泣いてしまう
13歳未満で2回接種の負担を減らしたい
兄弟が多く、通院回数を減らしたい
保育園、学校、学童、塾、部活、習い事など集団生活が多い
受験、大会、発表会、旅行など大切な予定がある
春や夏のインフルエンザ小流行にも備えたい
できるだけ子どものストレスを少なく予防したい
予防接種は、単に「効果の数字」だけで選ぶものではありません。
お子さんが嫌がらずに受けられること、保護者が予定を組みやすいこと、毎年続けやすいことも、とても大切です。
その点で、フルミスト®は子育て世代にとって非常に現実的な選択肢です。
接種にはコツがあります
フルミスト®は、鼻にスプレーするだけのワクチンですが、適切に投与するにはコツがあります。
鼻の中に正しく噴霧すること
左右に適切に分けて投与すること
接種時に強く吸い込む必要がないことを説明すること
接種前に鼻汁や鼻閉の状態を確認すること
接種後の注意点を伝えること
添付文書でも、本剤は鼻腔内噴霧用であり、絶対に注射しないこと、接種時に被接種者が積極的に吸入する必要はないことが示されています。
「鼻に入れるだけ」と思われがちですが、実際には、子どもが怖がらない声かけや、タイミングよく確実に噴霧する経験も大切です。
当院では2年前から導入し、1000件以上の接種実績があります
当院では、2年前から経鼻インフルエンザワクチンを導入し、これまでに1000件以上の接種実績があります。
実際に接種されたご家庭からは、
「注射じゃないので子どもが嫌がらなかった」
「兄弟まとめて受けやすかった」
「1回で済むので予定が立てやすい」
「去年よかったので今年も希望したい」
「予防接種のストレスが減った」
という声をいただいています。
当院では、単に接種するだけではなく、お子さんの年齢、喘息やアレルギーの有無、鼻炎の状態、過去の副反応、家庭内に免疫不全の方がいないか、受験や行事の予定などを確認したうえで、フルミスト®が適しているかを判断しています。
注意が必要なお子さんもいます
フルミスト®は生ワクチンです。
そのため、すべてのお子さんに適しているわけではありません。
日本小児科学会は、特に喘息患者には不活化インフルエンザHAワクチンを推奨しています。また、免疫不全の方、妊婦、2歳未満、19歳以上、周囲に免疫不全患者がいる場合などでは、注射ワクチンを選ぶべき場合があります。
鼻水や鼻づまりが強い場合も、接種のタイミングを調整した方がよいことがあります。
ご希望がある場合でも、診察時に安全性を確認したうえで接種します。
まとめ:今年のインフルエンザ予防も、フルミスト®を選択肢に
インフルエンザは、冬だけでなく夏にもみられるようになっています。旅行、帰省、部活、学童、塾、習い事など、子どもたちは一年を通して感染機会があります。昨シーズンのインフルエンザ重症者は、ほぼ未接種のお子様でした。
フルミスト®は、鼻にスプレーする経鼻インフルエンザワクチンです。
注射の痛みがなく、対象年齢では1回接種で済み、鼻の粘膜免疫を含めた予防効果が期待されます。
医学的には、注射ワクチンより必ず有効と断定するものではありません。
しかし、2歳〜19歳未満では注射ワクチンと同等に推奨されており、痛くない、1回で済む、子どもが受け入れやすいという点で、子育て世代にとって大きなメリットがあります。
当院では2年前からフルミスト®を導入し、1000件以上の接種実績があります。
インフルエンザを「流行してから慌てる病気」にしないために、今年は痛くない経鼻ワクチン、フルミスト®という選択肢をぜひご検討ください。
今シーズンのワクチンは、9月にご案内、10月上旬接種開始を予定しています。かかりつけご登録の方は、LINEにて優先案内、優待価格でご案内の予定です。






























